Monteggia Type I Equivalent損傷を伴ったJeffery型骨折の1例

全文

(1)

-135-日本肘関節学会雑誌27(2)2020

Mont

eggi

aTypeIEqui

val

ent損傷を伴った

Jef

f

ery型骨折の 1例

Keywords:JefferyTypeFracture(Jeffery型骨折),MonteggiaTypeIEquivalentInjury(MonteggiatypeIequivalent損傷), medialepicondylefractures(内上顆骨折)

Correspondingauthor:SakaeSano,DepartmentofOrthopedicSurgery,MatsudoCityGeneralHospital,993-1,Sendabori, matsudocity,Chiba,270-2252

【症例】8才,男児.バスケットボール中に手をついて受傷.他院より左上腕骨内側上顆骨折の診断に て紹介受診.レントゲンでさらに橈骨頭亜脱臼と尺骨bowing,CTにて橈骨頚部骨折,肘頭骨折を認 め,MonteggiatypeIequivalent損傷に伴う Jeffery型骨折と診断した.受傷 6日後に尺骨 bowingの徒 手整復と内側上顆骨折のアンカー固定を行った.最終経過観察時,JOA-JESscoreは 96点であった. 【考察】我々が渉猟し得た範囲では本骨折の報告は海外を含めこれまでない.しかしながら小児では 正確な画像診断が困難であり,このような症例の診断には特に注意が必要である.受傷機転は手肘関 節伸展位で手をつき肘外反位となりJeffery型骨折を受傷,その後回内ストレスが前腕にかかり橈骨頭 脱臼に続き尺骨のbowingを生じたと推定した.今後長期に渡る経過観察が必要である. 佐野 栄1 品田 良之1 阿部 圭宏2 斉藤 3 1松戸市立総合医療センター 整形外科 2千葉ろうさい病院 3JCHO東京城東病院

ACaseofaMont

eggi

aTypeIEqui

val

entI

nj

ur

yWi

t

haJef

f

er

yTypeFr

act

ur

e

SakaeSano1 YoshiyukiShinada1 YoshihiroAbe2 ShinobuSaitoh3

1DepartmentofOrthopedicSurgery,MatsudoCityGeneralHospital 2ChibaRosaiHospital

3JCHOTokyoJotoHospital

【緒 言】

MonteggiatypeIequivalent損傷は比較的稀で,小児 では症状が乏しいことも多く他の付随する骨損傷を 伴うと更に見逃されやすくなる.今回,他院で上腕骨 内 側 上 顆 骨 折 と 診 断 さ れ た 後,MonteggiatypeI equivalent損傷を伴う Jeffery型骨折が判明した症例を 経験したので報告する. 【症 例】 8才,男児.バスケットボール中に手をついて転倒 後左肘の痛みと腫脹が出現し,近医を受診した.左上 腕骨内側上顆骨折の診断にて受傷後2日目に当科紹介 受診した.前医で撮影した肘関節単純X線画像(図 1) ではWatson-Jones分類 typeIISalter-HarristypeIIIの 内側上顆骨端線裂離骨折および橈骨頭の軽度亜脱臼 を認めたため(図1-a,1-b),MonteggiatypeIequivalent 損傷などを疑い,両側前腕全長側面単純X線撮影 (図2)を行った.左右を比較すると,右健側の尺骨 Maximumulnarbow(MUB)は 0.1mmであったのに対 し(図2-a),左患側の尺骨 MUBは 2.6mmであったた め前方凸のplasticbowingと橈骨頭亜脱臼と診断した (図2-b).左肘関節 CT画像(図 3)では,橈骨頚部骨 折,肘頭骨折を認めた.以上より,MonteggiatypeI equivalent損傷(Letts分類 typeA1),Lincoln分類 type B2))に伴うJeffery型骨折と診断し受傷後 6日に全身 麻酔下に手術を行った.仰臥位で透視下に尺骨を後 方凸の方向に5分間徒手的に持続的に矯正をかけ plasticbowingを整復した.前腕回内,回外位で橈骨頭 の整復位を確認した.整復後,透視下に外反動揺性を 認めたため内側上顆骨折の観血的整復固定術を行っ た.手術は仰臥位で内側上顆やや後方から侵入し尺 骨神経を確認しマーキングした.内側上顆骨端核骨 片は軟骨が薄くついたまま屈筋腱に引っ張られ遠位 前方に約7mm転位していた.スクリューでの固定は 困 難 と 判 断 し,吸 収 性 ア ン カ ー(GRYPHONBR Anchor,JohnsonandJohnson社)を内側上顆の母床に挿 入し,骨片周囲の屈筋群にアンカーの糸をかけて固定 した.この操作によって肘関節の不安定性は消失し, 橈骨頚部骨折,肘頭骨折は転位がほとんどなかったた め保存的に加療することとした.術後は前腕回外位 でロングアームキャスト固定を3週間行った. 術後2か月の単純 X線正面像では内側上顆骨端核骨 片の癒合を確認した(図4-a).また透視画像では最大 回内位でも橈骨頭の整復位が保たれていることを確 認した(図4-b).術後 9か月での最終経過観察時単純 X線画像で,左尺骨に術直後と同じ MUB1.4mmの bowingの残存を認めたが(図 5-a),CT画像(図 5-b) や各肢位での透視画像でも橈骨頭の整復位が得られ, 明らかな不安定性もなかった(図6-a,6-b,6-c).最終 経過観察時の肘関節可動域は伸展0度,屈曲 130度(健 側差10度),前腕回内 95度・回外 90度で,日本整形 外科学会肘関節機能スコア(JOA-JESscore)は 96点 であった.

(2)

MonteggiaTypeIEquivalent損傷を伴った Jeffery型骨折の 1例

-136-図1;前医で撮影された左肘関節単純 X線画像

a;正面像 :上腕骨内側上顆遠位前方に約 7mm転位した 内側上顆骨端核骨片を認めた(Watson-Jones分類 type II,Salter-HarristypeIII).

b;側面像 :橈骨頭の亜脱臼を認めた. a b 図2;両側前腕全長側面単純 X線画像 a;右健側 :尺骨 MUB0.1mm b;左患側(中間位):尺骨 MUB2.6mmの前方凸の plastic bowingと橈骨頭脱臼を認めた. a b 図3;左肘 CT画像 a;冠状断 :遠位前方に約 7mm転位している内側上顆骨 端核骨片 b;冠状断 :橈骨頚部骨折 c;冠状断 :肘頭骨折 d;矢状断 :橈骨頭脱臼,橈骨頚部骨折 a b c d 図4;術後 2か月左肘関節単純 X線,単純 X線透視画像 a;単純 X線正面画像 :内側上顆骨端核骨片の癒合を確認 した. b;側面単純 X線透視画像(最大回内位):橈骨頭は最大 回内位でも整復されていた. a b 図5;術後 9か月(最終経過観察時)単純 X線画像,CT画像 a;左前腕全長側面単純 X線画像(軽度回外位):MUB1.4mm の残存を認めた. b;左肘 CT画像 ;矢状断像 :橈骨頭は整復されている. a b

(3)

佐 野 栄 ほか

-137-【考 察】

Badoは尺骨骨折の部位にかかわらず橈骨頭脱臼を合 併するものをMonteggialesionとして 4つの型に分類, さ ら に そ の 中 のI,II型 の 類 似 損 傷 を そ れ ぞ れ equivalenttypeI,IIと分類し3),橈骨頭前方脱臼は単独 脱臼であるとした.その後Chamay4)Acuteplastic bowingの概念が出現し,1994年,Lincolnら2)は“橈 骨頭単独脱臼”は存在しないとし,単純X線では判明 しないminimalbowを伴った橈骨頭脱臼であると主張 した.また,通常健側のMUBが 1mmを超えることは ないとしている.

Monteggia骨折の頻度は小児の全前腕骨骨折の 1%未 満と比較的稀な損傷だが3)Monteggiaequivalent損傷Monteggia骨折中の 14%程度と報告されている5) 一方,橈骨頚部骨折に肘頭骨折を合併したいわゆる Jeffery型骨折の割合は Monteggia骨折中の 0.7%程度と され6),いずれも頻度が少ない.われわれが渉猟し得 た範囲ではMonteggiatypeIEquivalent損傷に伴った Jeffery型骨折の報告は海外を含めこれまでない.しか しながら小児の場合正確な画像診断が困難であること もしばしばあり,実際には同じような症例が埋もれて いる可能性がある.本症例でも初診時レントゲンで橈 骨頭脱臼がわずかであったことや,典型的なJeffery型 骨折とは異なりCT画像で橈骨頚部骨折,肘頭骨折が判 明したことより,このような症例の診断には特に注意 が必要であると思われた. 受傷機転について,Jeffery型骨折は手肘関節伸展位 で手をつき肘が外反位となることにより生じるとされ る一方6)MonteggiatypeIequivalent損傷は,手肘関節 伸展位,かつ前腕回内位で手をつくことにより輪状靱 帯が弛緩し,橈骨頭の安定性が低下,さらに上腕二頭 筋が収縮することにより橈骨頭が前方脱臼し,続いて 脱臼した橈骨頭に代わり尺骨前方骨皮質に剪断力がか かることにより,さらに尺骨の可塑性変形や若木骨折 を引き起こすとされる3).以上より,本症例では手関 節伸展位で手をついた際に肘外反位となり最初に Jeffery型骨折を受傷し,その後通常より強い回内スト レスが前腕にかかったため橈骨頭が前方に脱臼し,さ らに尺骨のbowingを生じたものと推定した. 今回の症例ではMUB1.4mmの bowingの残存がある ものの,前腕回旋制限や橈骨頭の再脱臼を認めていな い.しかし品田らは尺骨のbowingの残存は橈骨頭の不 安定性や再脱臼につながる可能性があると述べてお り7),今後長期に渡り橈骨頭の再脱臼や可動域制限が ないかを確認していく必要があると考えている. 【結 語】

MonteggiatypeIequivalent損傷を伴った Jeffery型 骨折の報告はこれまでにない.

・ 治療は尺骨bowingの徒手整復と転位した内側上顆 骨折のアンカー固定術で橈骨頭の整復が得られ,良 好な結果が得られた.

MonteggiatypeIequivalent損傷について,今後橈 骨頭の再脱臼や可動域制限が生じないか長期の経過 観察が必要である.

この論文の要旨は第32回日本肘関節学会で発表した.

【文 献】

1)LettsM,LochtR,WiensJ.:Monteggiafracture-dislocations inchildren.JBoneJointSurgBr.1985;67(5):724-7. 2)LincolnTL,MubarakSJ.:"Isolated"traumaticradial-head

dislocation.JPediatrOrthop.1994;14(4):454-7.

3)JohnM.Flynn,DavidL.Skaggs,PeterM.Waters:Annular ligamentrepairorreconstruction.RockwoodandWilkins: FracturesinChildrenEighthedition.LippincottWilliams& Wilkins.2014;528-534.

4)ChamayA.:Mechanicalandmorphologicalaspectsof experimentaloverloadandfatigueinbone.JBiomech. 1970;3(3):263-70.

5)OlneyBW,MenelausMB.:Monteggiaandequivalentlesions inchildhood.JPediatrOrthop.1989;9(2):219-23. 6)JefferyCC:Fracturesoftheheadoftheradiusinchildren.

JBoneJointSrgBr.1950;32:314-24.

7)品田春生,能瀬 宏行,横山 裕之ら:上腕骨内側上顆骨 折を合併した小児Monteggia骨折の一例.関東整災誌. 2014;45巻臨増号外:p.185.

6;各肢位での透視画像 ;いずれの肢位でも橈骨頭は整復されている.

Updating...

参照

Updating...

関連した話題 :

Scan and read on 1LIB APP